主人公セトル=ジャン・ストニは、レノンセル伯爵の専属医師として病弱な一人娘リジエンヌ・エイパ(リズ)の治療に当たっていた。
幸い、三年に及んだ困難な治療は功を奏し、リズは健康な躰を得る。少女から年頃の娘へと成長した彼女には縁談もまとまり、その幸せな旅立ちを見届けて、セトル=ジャンの専属医としての生活は終わりを迎えるはずだった。
だが、三年の間に募ったセトル=ジャンとリズの想いは、簡単に消し去れるほど小さなものではなかった。
別れの夜、セトル=ジャンは苦悩し、リズは涙に暮れる。
そんな二人に、手を取り合って逃げるよう奨めたのは、意外にも政略的な結婚を喜んでいたはずのリズの父、レノンセル伯爵だった。
詳しい事情を何も知らされぬまま、セトル=ジャンはリズの手を引き、避暑地ミゼイユにある別荘へと向かうことになる。
そこで出会う優しい人々、リズとの間に重ねていく幸せな夜。
二人は、この時が永遠に続くことを信じていた。
シェル・クレイル
──残酷な欲望の中に身を沈める時が来るとは、思いもせずに……
オフシャルサイトより
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